社会保険労務士・行政書士
青柳義隆事務所
未支給年金を受取れる人 : 優先順位と受取要件
【 未支給年金とは 】
〝年金は後払い〞そのため受給者は必ず1か月分か2か月分の年金支給額を受け取れずに亡くなっていきます。 受給権者が受け取ることのできなかった最後の年金支給額、これが未支給年金です。
(年金受給者が亡くなったとき) ⌘ 年金は偶数月(2月、4月、6月、8月、10月及び12月)の15日に前月分と前々月分の 2か月分が支給され、亡くなった日の属する月までの分が支払われます。 ※ 年金受給権は一身専属権であるし、 未支給年金は相続の対象にもなりません。 ▶ 未支給年金は年金受給者の三親等内の親族であって、受給者の死亡の当時受給者と生計を同じくしていたものは、自己の名で請求し受取ることが出来ます。◀
未支給年金は 5年間請求しないと時効になり、請求権者がいない場合は国庫に戻されます。
〝未支給年金は請求できる〞ってことを知らなかったり、請求し忘れているケースがありますので、相続の際にチェックすべきです。 〝認定要件〞について詳しくは【生計同一認定要件】☜ここをクリック 【 請求者の範囲と優先順位 】
⌘ 次の者が未支給年金の請求権者で、優先請求順位が決められています。 【 受取れる人のPoint!と請求者の注意点 】
《 未支給年金を受取れる人のPoint!》 《 請求者の 注意点 》 ❖ 優先請求順位者と後順位者の双方から請求があり、後順位者に年金受給者との「 生計同一」が認められて未支給年金が支払われたケースを紹介します。
【 生計同一認定要件 】
⌘ 生計同一の認定に当たっては、次に該当する者は年金受給者の死亡の当時受給者と生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとされます。
(イ) 単身赴任、就学又は病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事情が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき ② 父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等の親族である場合 【 請求権者の拡大 】
⌘ 未支給年金を請求できる者の範囲は2親等以内の親族( 配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹 )に限られていましたが、社会実態の変化に伴い これら以外の親族、例えば長男の妻や甥・姪などが最期を看取る機会が増えてきていることから「年金機能強化法」により、平成26年4月より請求できる者の範囲が3親等以内の親族まで拡大されました。
【 身分関係の証明 】
⌘ 未支給年金を請求する者は、年金受給者との身分関係(続柄)と、受給者の死亡の当時受給者と「生計を同じくしていたもの」であることを証明する必要があります。
【生計同一状況による提出書類の違い 】
⌘ 亡くなった当時の年金受給者と請求者(認定対象者)との生計同一状況により、請求者の証明する提出書類が違ってきます。
【 身分関係を証明する戸籍謄本・抄本 】
⌘ 身分関係を公証する唯一の公簿である戸籍謄本・抄本を提出して証明します。
【 請求書の提出から支給されるまで 】
⌘ 請求者は、未支給年金請求書に亡くなられた年金受給者との ①「身分関係」と ②「生計を同じくしていたもの」の証明書類 ▪ 死亡者の年金証書 ▪ 振込先の預金通帳(コピー)を添付して最寄りの年金事務所に提出します。 ⌘ 請求書を提出してから未支給年金が支払われるまで おおむね 3ヶ月くらいかかります。 【 未支給年金と税 】
Q. 未支給年金は相続税の課税対象となりますか? A. 未支給年金は相続税の課税対象にはなりません。
※ 年金法の支給規定では、例えば 年金受給者が 6月に亡くなったときでもその6月分が、7月に亡くなったときには6月分と7月分の合わせて2か月分の支給額が8月15日に支払われることになっています。
しかし 受給権者は既に亡くなっているので、支払われることになっている支給額は受取ることが出来ません。勿論、一身専属権の年金を遺族も受取ることはできません。
年金は後払い のため受給権者が亡くなると必然的に受け取れない分が生じるのです。
厚生労働省年金局 令和5年12月「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の状況」より
公的年金の平均受給額
国民年金 月5万6428円
厚生年金 月14万4982円
年金支給対象月(支給額は後払い)
年金の支払月と支給日
前年の12月 と 当年の1月(2か月分)
☞ 当年の 2月15日に支給
当年の2月 と 3月(2か月分)
☞ 当年の 4月15日に支給
当年の4月 と 5月(2か月分)
☞ 当年の 6月15日に支給
当年の6月 と 7月(2か月分)
☞ 当年の 8月15日に支給
当年の8月 と 9月(2か月分)
☞ 当年の 10月15日に支給
当年の10月 と 11月(2か月分)
☞ 当年の 12月15日に支給
▶15日が土曜日・日曜日のときは金曜日に繰り上げて支払われ、祝日のときは直前の平日に支払われます。
〝相続の対象にならない理由〞 の詳細は【未支給年金と税】☜ここをクリック
〝相続の対象にもならない〞この 未支給年金 はどうなるのでしょうか?
(㊟ 死亡届の提出の遅れや、既に定期支払作業が終了していた場合等により過払いとなった分は、日本年金機構に返納することになります。)
⌘ 〝認定要件〞を満たす請求権者は、死亡した年金受給者が受取れなかった最後の年金を、自己の固有の権利として請求し受け取ることが出来るのです。
第19条 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することが出来る。
第1位 配偶者 2位 子 3位 父母 4位 孫 5位 祖父母 6位 兄弟姉妹 7位 上記以外の三親等内の親族(※ 上記以外の三親等内の親族 の詳細は【請求権者の拡大】☜ここをクリック )
▶ 未支給年金を受け取ることができる先順位者(年金受給者の死亡の当時受給者と生計を同じくしていたもの)がいる場合には、後順位者は受け取ることが出来ません。
▶ 未支給年金を受けるべき同順位の親族が2人以上いる場合であって、そのうち1人がした未支給年金の請求は、全員のためにその全額についてしたものとみなされます。
▶ 「三親等以内の親族」であること (※年齢制限などなく若い方も受取れます。)
▶ 年金受給者の死亡の当時受給者と「生計を同じくしていたもの」であること
※「生計を同じくしていたもの」については【 生計同一認定要件 】☜ここをクリック
※ 優先請求順位者からの請求であっても 年金受給者の死亡の当時受給者と「生計を同じくしていたもの」と認められなければ未支給年金は支給されません。
► 亡くなった者の子(娘)と後順位者の兄が未支給年金を請求したケース ◄
マンションの3階に住んでいた A が亡くなり、その上階に住み 弟であるAの世話をしていた兄が、亡Aと生計を同じくしていたとして未支給年金を請求したので、厚生労働大臣は支給を決定した。
その後、Aの死亡当時 住所地は別であった娘が「亡くなったA(父)と生計を同じくしていた」としてAの未支給年金を請求したため、厚生労働大臣は請求人(兄)に対し、決定した本件未支給給付について、「あなたよりも同給付を受けるべき順位が高い方が判明したため」として、本件未支給給付の支給の決定を取り消す旨の処分をした。
請求人(兄)は、この処分を不服とし、社会保険審査官に対する審査請求を経て、審査会に対し再審査請求をした。
…食事の世話及び療養の援助等、同一住所地の建物の上階に居住する請求人により「生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的援助が行われていた」と認めるのが相当であり、請求人と亡き弟の生計同一を認めることが出来るというべきである。…
ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(ア) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(イ) 定期的に音信、訪問が行われていること
ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ) 生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われていると認められるとき
◈「生計維持関係等の認定基準及び認定の取り扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号)通知より抜粋
平成26年4月より請求権者として拡大された 三親等以内の親族
1 親等 子の配偶者、 配偶者の父母
2 親等 孫の配偶者、 兄弟姉妹の配偶者、
配偶者の兄弟姉妹、 配偶者の祖父母
3 親等 曾孫、 曾祖父母、 甥・姪、 曾孫の配偶者、
おじ・おば、
甥・姪の配偶者、 おじ・おば の配偶者、
配偶者の曾祖父母、 配偶者の甥・姪、
配偶者の おじ・おば
請求者が証明すべき2っのこと 証明書類
① 年金受給者と請求者との身分関係( 三親等以内の親族であること )
・戸籍謄本や戸籍抄本を提出します。
※ 詳細は【 身分関係を証明する戸籍謄本・抄本 】☜ここをクリック
② 年金受給者と請求者が「生計を同じくしていたもの」であること
・住民票(世帯全員)や住民票の除票を提出します。
(▶ 年金受給者との生計同一状況により、理由書や申立書及び第三者の証明等も必要になります。)
※ 詳細は【 提出書類の違い 】☜ここをクリック
生計同一認定対象者が 配偶者又は子 の場合
認定対象者の状況区分 提出書類
住民票上同一世帯に属しているとき ◎ 住民票(世帯全員)の写
住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき ◎それぞれの住民票(世帯全員)の写
◎ 別世帯となっていることについての理由書
住所が住民票上異なっているが、現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき ◎それぞれの住民票(世帯全員)の写
◎ 同居についての申立書
◎ 別世帯となっていることについての理由書
◎ 第三者の証明書又は別表4に掲げる書類
単身赴任、就学又は病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事情が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
(ア)生活費、療養費等の経済的援助が行われていること
(イ)定期的に音信、訪問が行われていること ◎それぞれの住民票(世帯全員)の写
◎ 別居していることについての理由書
◎ 経済的援助及び定期的な音信、訪問等についての申し立て
◎ 第三者の証明書又は別表4に掲げる書類
生計同一認定対象者が 父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・三親等内親族 の場合
認定対象者の状況区分 提出書類
住民票上同一世帯に属しているとき ◎ 住民票(世帯全員)の写
住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき ◎それぞれの住民票(世帯全員)の写
住所が住民票上異なっているが、現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき ◎それぞれの住民票(世帯全員)の写
◎ 同居についての申立書
◎ 第三者の証明書又は別表4に掲げる書類
住所が住民票上異なっているが、生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われていると認められるとき
◎それぞれの住民票(世帯全員)の写
◎ 経済的援助についての申し立て
◎ 第三者の証明書又は別表4に掲げる書類
別表4 生計同一関係を証明する書類
事 項 提出書類
①健康保険等の被扶養者になっている場合 ◎ 健康保険被保険者証等の写
②給与計算上、扶養手当等の対象になっている場合 ◎ 給与簿又は賃金台帳の写
③税法上の扶養親族になっている場合 ◎ 源泉徴収票又は課税台帳等の写
④定期的に送金がある場合
◎ 預金通帳、振込明細書又は現金書留封筒等の写
⑤その他①~④に準ずる場合
◎ その事実を証する書類
(※ 上記は一般的な例であるため、戸籍を取得する前に年金事務所で確認することをおすすめします。)
未支給年金の請求者 身分関係を証明する戸籍謄本・抄本
配偶者 の場合 ・請求者の戸籍謄本
※ 戸籍謄本の身分事項欄で亡くなった者の配偶者であることが証明できます。
子 の場合 ・請求者(子)の戸籍抄本(又は謄本)
※ 戸籍に記載されている親の名前で証明できます。
父母 の場合 ・亡くなった者(子)の戸籍抄本(又は謄本)
※ 戸籍に父母の名前が記載されているので証明できます。
孫 の場合 ・請求者(孫)の戸籍抄本(又は謄本)と親の戸籍謄本
※ 請求者である孫の戸籍から孫の親の名前を確認し、親の戸籍から亡くなった者(祖父母)の名前を確認することで身分関係を証明できます。
祖父母 の場合 ・亡くなった者(孫)の戸籍謄本とその親の戸籍謄本
※ 亡くなった孫の戸籍謄本から孫の親の名前を確認し、親の戸籍謄本から請求者である祖父母の名前を確認することで身分関係を証明できます。
兄弟姉妹 の場合 ・亡くなった者の戸籍抄本(又は謄本)と請求者の戸籍抄本(又は謄本)
※ 亡くなった者の戸籍の父母欄と請求者の戸籍の父母欄が同じであることで身分関係を証明できます。
上記以外の三親等内の親族 の場合 ・亡くなった者の戸籍謄本と請求者の戸籍抄本(又は謄本)それと亡くなった者と請求者がつながる戸籍 を取得して身分関係を証明することになります。
年金事務所では提出書類に不備がないか確認し、不備がない場合には次に事務センターで審査が行われます。そして審査結果に基づき日本年金機構本部で支給決定が行われます。
↓
年金事務所 ・請求書類の受付 ・添付書類の確認
↓
事務センター ・請求内容の審査
日本年金機構本部 ・審査結果に基づき支給決定
支給を受けた請求権者の一時所得になります。
《 国税庁の回答 》
未支給年金請求代行報酬 25,000円
(戸籍謄本・住民票・切手代などは別途 実費を請求します。)
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